日本でもアスベストによる死者が多数にのぼることが報道されて以来,アスベストは大きな社会問題となった。建材や天然鉱物中のアスベスト含有量の分析には,X線回折と位相差顕微鏡による分散染色法が主に使用され,熱分析によるアスベストの定性・定量分析は限られた場合にのみ用いられているが,その加熱分解挙動の把握は今後の溶融処理技術の開発を進める上で重要である。一番大量に使用されているクリソタイルは,600~700℃で脱水酸化反応が起こるが依然として繊維状を保持していることが確認されており,繊維状でなくなるには1100℃程度まで加熱する必要がある。左官用モルタル混和材中のクリソタイルの定量には微分熱重量法が推奨されている。アスベストの無害化処理には現在では1600℃以上の高温溶融が必要であるが,フッ化カルシウムなどを含むフロン分解物との混合物を700℃まで加熱すると粒子状の非アスベスト化合物に変化するなどの新しい低温処理研究も進められている。
This report describes thermal decomposition behavior of asbestos including chrysotile analyzed by using TG-DTA and other analytical instruments. Heating process at least at 1100℃is required in order to dissolve asbestos into harmless minerals. Heating treatment of asbestos at 700℃ mixed with chlorofluorocarbon waste is proposed as a new low temperature treatment of asbestos to make products harmless. Thermal analysis will be playing more important role in the development of methods to render asbestos harmless.